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ジュリアン・ロバートソンがUSエアに大勝負を賭けたバリュー投資

流派 · 深度バリュー投資
巨匠 · 編集部
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一行で言うと 航空業界はバリュー破壊装置だと誰もが言う

何が語られるか

航空業界はバリュー破壊装置だと誰もが言う。それでも彼はタイガー・ファンドの1割近くを賭けた

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第 1 章 · ジュリアン・ロバートソンがUSエアに大勝負を賭けたバリュー投資
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第 1 章 · ジュリアン・ロバートソンがUSエアに大勝負を賭けたバリュー投資

航空業界はバリュー破壊装置だと誰もが言う。それでも彼はタイガー・ファンドの1割近くを賭けた

1992年の冬、ジュリアン・ロバートソンはタイガー・ファンドの資産の1割近くを、ある一社の航空会社に賭けた。

これは小さな遊びではない。当時タイガー・ファンドの運用規模はすでに70億ドルを超えていた。1割といえば7億ドル以上、それだけの現金がそっくりUSエアの株に注ぎ込まれたということだ。この知らせを聞いたウォール街の同業者たちの最初の反応は、たいてい沈黙、それから首を横に振ることだった。投資の世界には、航空業界をめぐる古い皮肉なジョークがある。「百万長者になりたいなら、まず10億ドル用意して、それで航空会社を買え」

ロバートソンはもちろんこのジョークを知っていた。気にしなかった。

1989年から1991年にかけて、湾岸戦争が国際原油価格を天井まで押し上げ、旅客需要も同時に崩れた。USエアの株価はピーク時の1株40ドル近くから、10ドルを割り込むまで落ちていった。ロバートソンはこのチャートを見つめながら、パニックではなく好機を見ていた。彼の論理は明快だった。USエアは膨大な機材、路線網、空港の発着枠を持っている。これらの実物資産を再取得コストで計算すれば、いまの時価総額をはるかに上回る。市場はパニックのなかで、本物の資産を持つ会社を紙くず同然まで叩き売った。まさにディープ・バリュー投資家が動くべき瞬間だ。

彼の判断は、紙の上では非の打ちどころがなかった。

問題は、航空会社はビルではない、ということだった。

割安に放置されたオフィスビルなら、待てばいい。家賃は入り続け、資産はそこに在り続ける。時間は味方だ。ところが航空会社は、一日過ぎるごとに現金を燃やしている。機体は整備しなければならず、パイロットには給料を払い、路線と発着枠を維持しなければならない。たとえ乗客が一人も乗らなくても、請求書は同じように届く。USエアの1992年の年間赤字は6億ドルを超えた。これは一時的な苦境ではない。毎日休まず回り続ける、赤字を生む機械だった。

さらに致命的だったのが労使関係だ。アメリカの航空業界では昔から労働組合の力が強い。パイロット組合、整備士組合、地上職員組合、そのどれもが交渉の席では一筋縄ではいかない相手だった。当時のUSエアは複数の組合との労働協約をめぐる紛争に深く沈み込んでおり、コスト削減の努力は交渉のたびに膠着で潰されていった。ロバートソンが買ったのは資産だ。だが彼は一つのことを見落としていた。その資産から得られるはずの収益が、構造的な人件費によって大きく縛りつけられていたのだ。

1993年、USエアの株価は反発しなかった。下げ続けた。

1994年、まだ下げていた。

タイガー・ファンドのこのポジションは、帳簿の上に乗った重い石のようだった。四半期ごとの報告は、見るたびに気まずいものになっていく。外部の投資家が問い始めた。ロバートソンの答えはいつも同じだった。資産価値はそこにある、市場はいずれ理性を取り戻す。この言葉を彼は何度も何度も繰り返した。他人を説得しているようでもあり、自分自身を説得しているようでもあった。

バリュー投資でいちばん危険な瞬間は、間違って買ったときではない。間違って買ったのに、自分は正しいと信じ込んでいるときだ。

ロバートソンがUSエアを持ち続けた時間は、どんな合理的な損切りの目安をもはるかに超えていた。一つの素朴な問いが浮かぶ。もし15%の含み損が出た時点で規律的な再点検が走っていたら、もし30%の含み損で論理の見直しが強制されていたら、結果は違ったのではないか。答えはほぼ確実に「違った」だろう。だがタイガー・ファンドの文化は、大きく張り、集中させ、長く持つことだった。この文化は正しい銘柄では伝説を生んだが、間違った銘柄では誤りを限界まで増幅させた。

1994年から1995年あたりまでに、USエアの株価は1株4ドルを割る安値まで落ちた。ロバートソンが買い始めたコストと比べれば、損失は目を覆うばかりだった。このポジションが最終的にもたらした損失は、控えめに見積もっても数億ドル。タイガー・ファンドの歴史のなかでも、一回の代償として最も高くついた失敗の一つとなった。

ロバートソンはのちに、公の場でこの誤りを珍しく認めた。航空業界の構造的なコストへの理解が足りなかった、サイクル的な苦境をバリューの割安と読み違えてしまった、と。淡々と語られたその一言の裏には、数億ドルの授業料があった。

この事例がバリュー投資の世界で繰り返し引かれるのは、ロバートソンが賢くなかったからではない。まったく逆で、彼は賢すぎたのだ。彼の資産分析は技術的にはほとんど隙がなかった。だが彼は、不動産を分析する枠組みを、本質的にまったく異なる業界に当てはめてしまった。航空会社の資産は、それ自体ではキャッシュフローを生まない。それを起動させるには、利益を出せる運営体系が要る。その運営体系そのものが壊れているとき、どんなに安い資産も罠でしかない。

バフェットがのちに広く知られることになる言葉を残している。「優秀な経営者がひどい業界に挑むと、たいてい業界のほうが勝つ」。ロバートソンは1992年のUSエアで、この言葉の残酷さを身をもって証明した。

航空業界はその後の10年間も、底値を拾おうとするすべての投資家を苦しめ続けた。アメリカン航空、デルタ航空、ユナイテッド航空が相次いで破産保護を申請し、業界全体は2001年の同時多発テロの後、ふたたび危機に沈んだ。「資産が十分に安ければそれで足りる」と信じた投資家たちは、何度も何度も同じ石につまずいた。

ロバートソンのタイガー・ファンドは、最終的に2000年に閉鎖された。ハイテク株バブルのさなか、ファンドの逆張りの賭けが出血を止められなかったためだ。USエアのポジションがタイガー・ファンドを潰した最後の一藁ではない。だがそこに残された教訓は、ついに本当には消化されなかった。構造的に赤字を垂れ流す業界では、時間はバリュー投資家の味方ではない。敵なのだ。

安いということは、買う理由として十分であったためしがない。

静的な資産評価を、固定費の高い業界にそのまま当てはめてはならない。機材や発着枠といった資産の価値は、利益を生む運営体系を通じてはじめて現金化される。評価にあたっては、帳簿上の再取得コストだけを見るのではなく、運営層の構造的な収益力を同時に測らなければならない。—— 投資の教訓

本篇 1 の書き留めたい一節

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