何が語られるか
判断は正しく、方向も正しかった。それなのに、バブル崩壊のわずか6か月前に清算を迫られた。
试聴く第一章音声解説
精読全文
第 1 章 · ハイテクバブルを拒みナスダックを空売りした末にファンドを畳んだジュリアン・ロバートソン
判断は正しく、方向も正しかった。それなのに、バブル崩壊のわずか6か月前に清算を迫られた。
2000年3月、ジュリアン・ロバートソンはタイガー・ファンドを閉鎖する声明にサインした。彼の判断は正しかった。ただ、6か月だけ早かったのだ。
話は18年前にさかのぼる。1980年、ロバートソンはニューヨークで800万ドルを元手にタイガー・ファンドを立ち上げた。厳格なファンダメンタル分析とグローバルなマクロの視点で、彼はその元手を運用資産230億ドルにまで膨らませ、年率25%を超えるリターンを叩き出した。ウォール街は彼を「タイガー」と呼んだ。獰猛だからだけではない。何より、忍耐強かったからだ。彼は一つの判断のために何年でも待つことができた。市場が彼を裏づけにくるその日まで。
だが1999年の市場は、もう忍耐に報いなくなっていた。
その年、ナスダックは1年で86%上昇した。クアルコムは1年で株価が2600%跳ね上がった。アマゾンのPERは意味をなさないほど高騰し、アナリストたちは利益で評価するのをあきらめ、「ユーザー数の伸び」や「アイボール・エコノミー」で値段をつけ始めた。ハイテク・セクター全体が永久機関のようだった。毎日、自分で自分を強化していく。個人投資家が押し寄せ、機関投資家が追随し、株価がさらに上がり、もっと多くの人が押し寄せる。
ロバートソンはこの機械の前に立ち、動かなかった。
彼は1987年の暴落を見てきた。1994年の債券危機も、1998年のロシア・デフォルトとロングターム・キャピタル・マネジメントの崩壊も見てきた。彼の結論はこうだ。利益もなく、堀もなく、「コンセプト」だけで法外な評価を支えている会社は、いずれ価値という錨に引き戻される。彼は馬鹿げていると思うハイテク株を一群まとめて空売りし、同時に割安だと考える伝統的な業種——航空、金融、エネルギー——を買い持ちした。
このポジションは、1999年には大惨事だった。
タイガー・ファンドはその年、およそ19%の損失を出した。買った会社が間違っていたからではない。彼が買った会社を誰も欲しがらず、彼が空売りした会社がひたすら高騰し続けたからだ。解約通知が殺到し始めた。投資家は彼のロジックなど気にしない。彼らが見るのは明細だけだ。よそのファンドは50%、80%上がっているのに、タイガー・ファンドは19%のマイナス。
運用資産は230億ドルから65億ドルへと落ち込んだ。
この数字の裏には何があったのか。ロバートソンは毎朝、解約申請を開いては、流動性を作るために割安だと信じる保有銘柄を泣く泣く売らされていた。彼はもうポートフォリオを運用していなかった。取り付け騒ぎをさばいていたのだ。解約の一件一件が、彼の判断の独立性を蝕んでいった。もはや自分の判断で銘柄を持つことはできない。投資家のパニックに合わせてポジションを動かすしかなかった。
これこそ、バリュー投資家が直面する最も深い苦境だ。あなたの判断が裏づけられるには時間が要る。だが、あなたの資金はあなたに時間をくれない。
2000年3月、ロバートソンは決断した。投資家への手紙の中で、彼はこの市場がもはや「不合理な投機ゲーム」と化したと書いた。こんな環境では、自分の原則どおりにファンドを運用することはできない。彼は閉鎖を選び、残った資金を投資家に返すことにした。
それから6週間後、ナスダックは崩れ始めた。
2000年3月から2002年10月にかけて、ナスダックは5048ポイントから1114ポイントまで、78%下落した。クアルコムはピークから80%以上を失った。アマゾンは113ドルから6ドルへ。ロバートソンが空売りした銘柄は、一つ、また一つと彼の判断を裏づけていった。彼が買い持ちした伝統業種の株も、その後数年にわたって市場平均を上回った。
彼の分析は正しかった。彼のタイミングは間違っていた。そしてファンド運用というこの業界では、この二つは等しく致命的だ。
だが、話はここで終わらない。
タイガー・ファンドを閉じたあと、ロバートソンは引退しなかった。彼はマンハッタンのオフィスを苗床に作り替え、タイガー・ファンドから巣立っていった若いアナリストたちに、立ち上げ資金とオフィス・スペースを提供し始めた。彼らはのちに「タイガー・カブス(タイガーの子虎たち)」と呼ばれることになる。コールマンのタイガー・グローバル、マンデルのローン・パイン・キャピタル、ホアンのタイガー・アジア。ロバートソンは資金を株式と引き換えに渡し、彼らのファンドに持ち分を保有した。
この転身のロジックは明快だ。公開市場で解約圧力と戦うことはできない。けれど、公開市場を運用できる人材を、長期資本で支えることはできる。彼は自らを一人のファンドマネージャーから、エコシステムのノードへと変えたのだ。
2010年代に入ると、「タイガー系」のファンドが運用する資産の総額は、タイガー・ファンドの最盛期の何倍にも達した。このネットワークの中でロバートソンが保有する持ち分は、ファンド閉鎖後も彼の純資産を増やし続けた。
彼はバブルとの一騎打ちには負けた。だが、そのあとの20年には勝った。
投資家は、判断が正しくとも市場から退場させられることがある。これは矛盾ではない。現実だ。市場は正しさに報いない。正しいタイミングでなお生き残っている者に報いる。ロバートソンの物語が教えてくれるのは、極端な市場では、生き延びること自体が一つの戦略だということだ。撤退ではなく、解約圧力に人質に取られない構造を見つけ、時間をもう一度自分の味方につけること。それが鍵なのだ。
判断が正しいことと、それが裏づけられるまで生き延びることのあいだには、致命的な時間差がある。逆張りをするなら、「最長でどれだけ待つ必要があるか」をあらかじめ見積もり、その期間を耐え抜ける資本構造を確保しておかねばならない。さもなければ、正しい判断も無効と同じだ。—— 投資からの示唆
本篇 1 の書き留めたい一節
- 判断が正しいことと、それが裏づけられるまで生き延びることのあいだには、致命的な時間差がある。逆張りをするなら、「最長でどれだけ待つ必要があるか」をあらかじめ見積もり、その期間を耐え抜ける資本構造を確保しておかねばならない。さもなければ、正しい判断も無効と同じだ。—— 投資からの示唆



