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日経平均、34年ぶりの最高値——持ち続けるの意味と落とし穴

インデックス投資積立新NISA時間軸
流派 · インデックスパッシブ投資
巨匠 · 編集部
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一行で言うと 2024年、日経平均は34年ぶりに史上最高値を更新した

何が語られるか

2024年、日経平均は34年ぶりに史上最高値を更新した。その一日に、インデックス投資の真実——いつ・いくらで入るか、そして時間軸の重さ——がすべて凝縮されている。

1989年12月29日、日経平均は38,915円をつけた。それが天井だった。バブルは弾け、株価は下げ続け、やがて誰もが言うようになった——日本株はもう二度と戻らない、と。失われた10年、失われた20年、失われた30年。世代がまるごと、株式に絶望した。ところが2024年2月22日、日経平均はその古い高値を、終値で静かに超えた。約39,098円。実に34年ぶりの史上最高値だった。だがこの一日は、二つのまったく違う物語を同時に語っている。1989年の天井で一括で買った人にとって、それは34年かけてようやく取り返した日だった。一方、その停滞のあいだ毎月淡々と積み立てた人にとって、それはとうに報われた長旅の通過点にすぎなかった。同じインデックス、同じ34年。なぜ、こんなにも違うのか。

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第 1 章 · 日経平均、34年ぶりの最高値——持ち続けるの意味と落とし穴
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精読全文

第 1 章 · 日経平均、34年ぶりの最高値——持ち続けるの意味と落とし穴

ひとつの指数が、最高値を取り戻すのに34年かかった。世界一の経済大国でもない、新興国でもない。先進国・日本の、日経平均だ。

1989年12月29日。日経平均は38,915円をつけた。年末の取引所は熱狂に包まれていた。地価は東京の山手線の内側だけでアメリカ全土が買えると言われ、株価収益率(PER)は60倍を超え、世界の時価総額ランキング上人を日本企業が埋め尽くしていた。誰もが信じていた——日本株は、まだ上がる、と。

それが、天井だった。

年が明けると、株価は崩れはじめた。1990年、1991年、1992年。下げは止まらない。やがてそれは「失われた10年」と呼ばれ、いつしか「失われた20年」になり、ついに「失われた30年」という言葉が定着した。デフレが日本を覆い、給料は上がらず、株価のチャートは右肩下がりのまま横たわった。2009年、リーマン・ショックの底では、日経平均は7,000円台まで沈んだ。天井から、実に8割超の下落だ。一世代がまるごと、株式という言葉に絶望した。「株なんてやるものじゃない」——それが、長いあいだ日本の常識だった。

ところが、2024年2月22日。

日経平均は、その古い高値を、終値で静かに超えた。約39,098円。1989年12月29日以来、実に34年ぶりの史上最高値だった。テレビは速報を流し、新聞は一面で報じた。だが、ここで立ち止まって考えてほしい。34年。それは、長い。

1989年の天井で、日経平均に連動するインデックスを一括で買った人を想像してみよう。その人は34年間、含み損を抱え続けた。退職し、子を育て、住宅ローンを返し終え、孫が生まれた——その全期間、価格だけ見れば、彼の投資はマイナスだった。そしてようやく2024年、彼はトントンに戻った。利益ではない。「取り返した」だけだ。

これが、インデックス投資の落とし穴の、もっとも残酷な形だ。インデックスは長期で報いる、と人は言う。確かに、最後には戻った。だが「いつ・いくらで入ったか」が間違っていれば、その「長期」は34年にもなりうる。バリュエーション——つまり、どれだけ割高なときに買ったか——と、時間軸の重さ。この一括投資家は、その両方を、人生まるごとで思い知らされた。

だが、同じ34年を、まったく違う形で生きた人たちがいる。

毎月、決まった額を、淡々と積み立てた人だ。

ドルコスト平均法。難しい言葉だが、やることは単純だ。相場が高かろうが安かろうが、毎月同じ金額でインデックスを買い続ける。1989年の天井でも買う。だが、その後の暴落でも買う。7,000円台の底でも、同じ金額で買う。価格が安いとき、同じ1万円はより多くの口数を買う。そして30年。彼の平均取得単価は、天井ではなく、長い谷の真ん中あたりに沈んでいった。だから彼は、日経平均が最高値を更新するずっと前——とっくの昔に、利益が出ていた。同じインデックス、同じ34年。なのに、天井で一括した人は34年待ち、毎月積み立てた人はとうに報われていた。違いは、銘柄選びの腕ではない。入り方と、続ける時間だけだ。

そしてここに、もうひとつの主役がいる。配当だ。

日経平均の「価格」だけを見ると、34年間ほぼ横ばいに見える。だが、その間も日本企業は配当を払い続けた。配当を受け取り、それをまた同じインデックスに再投資し続けた人にとって、トータルリターン——値上がり益と配当を合わせた本当の成績——は、価格チャートが語る絶望とはまるで別物だった。停滞の30年は、価格で見れば荒野でも、配当再投資で見れば、静かに口数が増え続ける時間だったのだ。

では、2024年。なぜ、よりによって今、最高値だったのか。

いくつもの追い風が重なった。ひとつは、東京証券取引所が主導したコーポレートガバナンス改革だ。取引所は、PBR(株価純資産倍率)が1倍を割れたままの企業——つまり、市場が「解散した方がマシ」と値付けした会社——に、本源的価値に見合う経営を求めた。自社株買い、増配、ROE(自己資本利益率)の重視。企業は資本の使い方を問われ、株主に報いる方向へ動きはじめた。

そこへ、円安が輸出企業の追い風になった。海外で稼ぐ自動車や電機のメーカーは、円換算の利益を膨らませた。長く日本を縛ったデフレからの脱却が語られ、賃上げのニュースが続いた。そして、ウォーレン・バフェットだ。オマハの賢人は2020年以降、日本の大手商社株を買い増し、世界に向けて「日本株は割安だ」と評価した。その一言が、海外マネーの背中を押した。割安に放置されていた日本市場へ、世界の資金が流れ込んだ。

これらが束になって、34年ぶりの高値を押し上げた。だが——ここを見誤ってはいけない。これらの追い風は、後から振り返って初めて見えるものだ。1989年の天井で、あなたに2024年は見えなかった。失われた30年のどん底で、あなたに東証の改革もバフェットの買いも見えなかった。

だからこそ、結論はシンプルで、そして手強い。インデックス投資は、機能する。オルカン(全世界株式)も、S&P500も、新NISAという器も、世界中の人がたどり着いた、もっとも素直で正しい道具のひとつだ。難しいのは、道具ではない。長い停滞のなかで、それを握り続けることだ。

価格が34年戻らないあいだ、あなたは毎月、自分の口座が一向に増えないのを見つめ続けられるか。周りが「株なんて無駄だ」と言うなかで、淡々と買い増しを続けられるか。最高値という派手な一日は、テレビが映してくれる。だが本当の勝負は、誰も見ていない、長くて退屈な谷のなかで、静かに積み立てボタンを押し続けられたかどうかにある。

34年ぶりの最高値。それは、待った者への褒美ではない。続けた者への、答えだった。

指数は長期で報いる。報われるのは、底でも積立を止めなかった手だけだ。—— 投資の教訓

編集部について

編集部

本ケースは、日経平均の史実——1989年の最高値と2024年の更新——をもとに、編集部がまとめたインデックス投資の教材だ。インデックス投資はしばしば「ただ買って持つだけ」と語られる。だが、この34年の物語が突きつけるのは、もっと厳しく、もっと現実的な真実だ。インデックスは長期では報いる。ただし、いつ・いくらで入り、どれだけの時間に耐えられるかが、その「報い」の中身をまるごと書き換えてしまう。読者はここで気づくはずだ——勝つための道具はとっくに目の前にあり、難しいのは道具ではなく、それを握り続ける手のほうなのだと。

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