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藤野英人 · ひふみと成長投資 封面

藤野英人 · ひふみと成長投資

流派 · 成長投資
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一行で言うと 経営者に会い続け、日本の成長企業に長く賭ける——「ひふみ」を率いる藤野英人の、明るい投資哲学をたどる

何が語られるか

経営者に会い続け、日本の成長企業に長く賭ける——「ひふみ」を率いる藤野英人の、明るい投資哲学をたどる。

日本では長く、株は「怖いもの」「ギャンブル」と思われてきた。預金にお金を眠らせ、投資を遠ざける——そんな空気の中で、「投資は、明るい未来をつくる力だ」と言い切る運用者がいる。レオス・キャピタルワークス創業者、藤野英人。彼が率いる「ひふみ投信」は、自分の足で経営者に会いに行き、伸びていく日本企業を見つけ、個人の長期・積立の資金を託される投信として、多くの人の入り口になった。この unit では4章で、彼がどんな道を歩み、どんな目で企業を見て、何を「お金より大切」と考えたのかをたどる。投資のうまさの話ではない。お金との付き合い方そのものを、明るく問い直す話だ。

誰が読むべきか

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第 1 章 · 「株は怖い」と言う国で
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精読全文

第 1 章 · 「株は怖い」と言う国で

日本人は、株が嫌いだ。少なくとも、長くそう言われてきた。家計の金融資産のうち、半分以上が現金と預金に置かれている——欧米では株や投資信託の比率がずっと高いのに、日本では「お金は銀行に預けるもの」という感覚が、何十年も染みついてきた。株と聞けば「ギャンブル」「お金持ちのもの」「いつか騙される」。そんなイメージが、ごく普通の人々の口から出てくる国だ。

その国で、まったく逆のことを言い続けてきた運用者がいる。藤野英人。「投資は、明るい未来をつくる力なんです」と、彼はあちこちで語る。この unit では4章をかけて、彼の歩みと考え方をたどっていく。第1章では、彼が育った時代と、どうやって運用の世界に入ったのかを見る。第2章では、彼の運用の核心——「経営者に会いに行く」という、地道で泥くさいやり方を。第3章では、2008年に立ち上げた「ひふみ投信」と、個人の長期・積立という武器を。そして第4章で、『投資家がお金よりも大切にしていること』という一冊に込めた、彼の投資観そのものに触れる。

藤野は1966年、富山県に生まれた。早稲田大学を出て、社会に出たのは1990年。日本のバブルがちょうど崩壊しはじめた、あの年だ。日経平均は1989年末に史上最高値の3万8915円をつけ、そこから坂を転げ落ちていく。新社会人として日本株の世界に足を踏み入れた藤野が見たのは、上がっていく相場ではなく、延々と下がり続ける相場だった——後に「失われた20年」と呼ばれる、長く暗いトンネルの入り口だ。

彼が最初に身を置いたのは、野村投資顧問。その後、ジャーディン・フレミング、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントと、国内外の運用会社で日本株のファンドマネージャーを務めた。とくに中小型株——まだ世間に知られていない、小さくても伸びていく会社を見つける仕事に、彼はのめり込んでいく。大企業の名前で安心するのではなく、これから大きくなる会社を、誰よりも早く見つける。そこに運用の面白さがある、と彼は考えた。

ここで一つ、立ち止まって考えてみたい。下がり続ける市場の中で、なぜ彼は「成長」を信じられたのか。周りが「日本はもうダメだ」と言い、株を投げ売りしていた時代に、彼は会社訪問をやめなかった。理由はシンプルだ——市場全体が暗くても、その中に必ず、明るく伸びていく会社がある。彼はそれを、肌で知っていた。指数が下がることと、一社一社の中身は、別の話なのだ。

運用の世界には、大きく二つのタイプがいる。一つは、株価チャートや財務データを画面でにらみ、数字だけで判断する人。もう一つは、自分の足で会社に行き、経営者の顔を見て、社員の働きぶりを感じ取る人。藤野は、徹底して後者だった。彼にとって株は、数字の羅列ではなく、その向こうにいる「人」だった。会社が伸びるかどうかは、結局、そこにいる人で決まる——この確信が、彼の運用の出発点になる。

そしてもう一つ、藤野には変わった習慣がある。彼は若いころから、上場企業の社長たちと、数えきれないほど会ってきた。その数、累計で何千人にもなる。普通のファンドマネージャーが資料を読んで済ませるところを、彼は会いに行った。なぜそこまでするのか。「決算書には、過去しか書いていない。でも、その人と話せば、未来が見えるからです」——彼はそう言う。

考えてみれば、これは効率の悪いやり方だ。机に座って何十社分の資料を読むほうが、ずっと多くの会社をさばける。だが藤野は、効率を捨てた。会社を一社、また一社と訪ね、社長と向き合い、社員の働く姿を見て回る。時間も体力も使う。それでも、そこにしか手に入らないものがあると、彼は信じていた。みんなが同じ画面の同じ数字を見ている市場で、人と違う判断をするには、人と違う情報源を持つしかない。その情報源とは、結局「人」だった。

バブル崩壊後の日本では、暗いニュースばかりが流れていた。倒産、リストラ、不良債権——新聞をめくれば、絶望的な見出しが並ぶ。「日本はもう終わりだ」という声が、あちこちから聞こえてくる。だがその同じ時期に、藤野が会いに行った会社の中には、地味だけれど着実に売上を伸ばし、新しい挑戦を続ける経営者がいた。世間が下を向いているときも、そういう人たちは前を向いていた。藤野は、地道に「明るい会社」を探し続けた。市場の暗さに飲み込まれず、その中にある小さな光を一つひとつ拾っていく——それが、彼の仕事だった。

その積み重ねが、やがて自分のファンドを持つという決断につながっていく。2003年、彼は独立し、レオス・キャピタルワークスを立ち上げる。サラリーマン運用者から、自分の哲学で勝負する経営者へ——その転機がなぜ訪れたのか。そして、彼が会社訪問で本当は何を見ていたのか。次の章で、その「経営者に会う運用」の中身に踏み込んでいく。

第 2 章 · 経営者に、会いに行く

前の章では、藤野が下げ相場の日本で運用を始め、「会社は人で決まる」という確信を持つに至ったことを見た。では彼は、その確信を具体的なにどう運用に落とし込んだのか。答えは驚くほど単純だ——経営者に、会いに行く。

藤野の運用の核心は、ここにある。彼はファンドマネージャー人生を通じて、累計で何千人もの経営者と面談してきた。多い年には、年間で千人を超える社長に会ったこともある。決算書を読み込むのは当然として、彼はその先へ行く。実際にその人と向き合い、目を見て、声を聞き、会社の空気を吸う。なぜそこまでするのか。決算書に書いてあるのは「過去」だからだ。すでに起きたことの記録に過ぎない。だが、これから会社が伸びるかどうか——「未来」は、数字ではなく人の中にある。

彼は経営者に会うと、いくつかのことを見る。まず、自分の言葉で語れるか。用意された原稿を読み上げるのではなく、自社の事業を、課題を、夢を、自分の頭で考えて話せる経営者か。次に、嘘をつかないか。都合の悪い話から逃げず、失敗も率直に認められるか。そして、社員や取引先、社会に対して誠実か。藤野はこういう「人としての質」を、ものすごく重く見る。なぜなら、経営者の人格は、必ず会社のかたちに表れるからだ。

ここで一つ、彼の有名な観察がある。藤野は、会社のトイレや受付、社員の挨拶といった「細部」にも目を配った。掃除が行き届いているか。受付の人が来客に気持ちよく接するか。社員がいきいきと働いているか。一見、株価とは何の関係もなさそうな話だ。だが彼に言わせれば、こういう細部にこそ、その会社の本当の姿が出る。きれいごとを並べた決算説明より、廊下ですれ違う社員の表情のほうが、よほど正直なのだ。

そしてもう一つ、藤野が大切にしたのが「変化」だ。彼が探したのは、すでに完成された大企業ではない。今は小さくても、これから大きく変わっていく会社——成長の途中にある会社だ。だから彼は、中小型株を丹念に掘った。世間がまだ名前も知らない、けれど社長に熱があり、事業に勢いがあり、これから伸びていく予感のする会社。そういう会社を、誰よりも早く見つけて、長く持つ。これが彼の成長投資のスタイルだった。

短期で売り買いを繰り返して、わずかな値ザヤを稼ぐ——そういうやり方を、藤野は取らない。彼は、いいと信じた会社を、長く持ち続ける。会社が成長するには時間がかかる。種をまいて、芽が出て、木になるまで、何年もかかる。その時間に付き合うのが、成長投資なのだ。経営者に会い、人を見て、その人と会社の未来に賭ける。だから彼の投資は、どこか「応援」に似ている。

面白いのは、彼が「明るさ」を一つの判断材料にしていることだ。藤野は、暗い顔をした会社、言い訳の多い会社、変化を恐れる会社を避ける。逆に、困難の中でも前を向き、未来を語り、挑戦する会社に惹かれる。これは単なる気分の問題ではない。前を向いている会社は、変化に強く、社員が辞めにくく、新しいことに挑戦し続ける。結果として、伸びる確率が高い。明るさは、業績の先行指標になりうる——藤野は、長年の面談からそう学んだ。

もちろん、会いに行くのは骨が折れる。資料を読むだけなら机の上で済むが、何千人もの社長に会うには、膨大な時間と足が要る。それでも藤野はやめなかった。なぜなら、そこにしか「本物」はないと知っていたからだ。誰もが同じ数字を見ている市場で、人より深く知るには、人より多く会うしかない。

ここで、初心者がよく抱く疑問に触れておきたい。「経営者に会えるのはプロだけ。普通の個人投資家には真似できないのでは?」——たしかに、何千人もの社長に直接会うのは、個人には難しい。だが藤野の発想の核心は、面談そのものより、その奥にある姿勢だ。つまり、「その会社をつくっている人を見る」「数字の向こうにある事業の中身を考える」という姿勢だ。これなら、誰にでもできる。自分が普段使っている商品やサービスをつくっている会社はどこか。その経営者はどんな人で、何を語っているか。お店に入ったとき、社員はいきいきしているか。日常の中に、会社を見るヒントは無数に転がっている。藤野が教えてくれるのは、特別な手法ではなく、「人を見る目」で世界を眺める習慣なのだ。

こうして磨かれた「経営者に会う運用」を武器に、藤野は2003年に独立し、自分の会社レオス・キャピタルワークスを立ち上げる。だが、独立しただけでは足りなかった。彼にはもう一つ、やりたいことがあった——プロのお金持ちだけでなく、ごく普通の人たちに、この成長投資を届けたい。2008年、その思いが「ひふみ投信」というかたちになる。なぜ「直販」にこだわったのか。そして、なぜ「個人の長期・積立」が最強の武器になるのか。次の章で見ていこう。

第 3 章 · ひふみ——普通の人のための成長投資

前の章では、藤野が「経営者に会う運用」を武器に、2003年にレオス・キャピタルワークスを立ち上げたところまで来た。だが彼の目標は、プロのお金を運用することだけではなかった。ごく普通の人たちに、成長投資を届けたい——その思いが、2008年に「ひふみ投信」として結実する。

「ひふみ」という名前は、「一(ひ)・二(ふ)・三(み)」から来ている。一歩、二歩、三歩と、少しずつ前に進んでいく——そんな、地に足のついた成長のイメージだ。派手な名前ではない。だがそこに、藤野の思想がにじむ。一発で大儲けする話ではなく、こつこつ続けることで未来をつくる、という思想だ。

2008年といえば、リーマン・ショックの年だ。世界の金融市場が一斉に崩れ、「投資なんてとんでもない」という空気が、これ以上ないほど濃かった。よりによってそんな年に、藤野は個人向けの投信を立ち上げた。普通なら避ける。だが彼は逆に考えた——みんなが恐怖で逃げ出すときこそ、いい会社を安く長く買える好機だ、と。市場が暗いことと、そこにある会社の中身がいいことは、別の話。第1章で見た、彼の一貫した信念がここにも流れている。

ひふみが最初に選んだのは、「直販」というかたちだった。証券会社や銀行の窓口を通さず、自分たちで直接、お客さんにファンドを売る。なぜか。窓口で売られる投信の多くは、手数料を稼ぐために頻繁に乗り換えを勧められ、長く持つには向かない構造になっていた。藤野は、それを嫌った。彼が届けたかったのは、商品ではなく「長く付き合う関係」だ。直販なら、お客さんと顔の見える関係を結び、なぜこの会社に投資しているのかを、自分の言葉で説明できる。運用する側と、お金を託す側が、同じ方向を向ける。

そして藤野が、普通の人にこそ勧めたのが「長期」と「積立」だ。ここが、この章のいちばん大事なところだ。なぜ、個人にとって長期・積立が最強の武器になるのか。理由は、プロにはできないことだからだ。プロの運用者は、毎月、毎四半期、成績を問われる。少し下がれば顧客が逃げ、上司に詰められる。だから、本当はじっくり持ちたくても、短期の成績に振り回される。ところが個人には、その縛りがない。誰にも成績を報告しなくていい。10年でも20年でも、黙って持ち続けられる。この「時間を味方につけられる自由」こそ、個人だけが持つ最大の強みなのだ。

積立も同じだ。毎月、決まった額を淡々と積み立てる。相場が高いときは少なく、安いときは多く買うことになり、平均の買値はならされていく。何より大きいのは、「いつ買うか」で悩まなくて済むことだ。多くの人は、相場を予想して当てようとして、結局タイミングを外す。だが積立は、予想を放棄する。予想しないことで、かえって失敗しにくくなる——これは逆説だが、本質を突いている。

そしてここに、複利の力が乗る。成長する会社に長く投資し、得た利益をまた投じていく。時間が経つほど、雪だるまは大きくなる。1年や2年では、たいした差にならない。だが10年、20年と続けたとき、その差は驚くほど開く。藤野が「長期」をくり返し説くのは、複利の本当の威力が、長い時間の先にしか現れないからだ。

ひふみは、こうした思想を地道に積み上げ、多くの個人投資家に支持されていった。「ひふみ投信」(直販)に加え、証券会社などを通じて買える「ひふみプラス」が広がり、運用資産は大きく伸びた。投資から遠かった人、株を怖がっていた人が、ひふみをきっかけに、少しずつ自分のお金と向き合いはじめる。藤野が望んでいたのは、まさにそれだった。一部のお金持ちだけが得をする世界ではなく、普通の人が、こつこつと未来をつくれる世界。

ただし、ひふみの道のりは順風満帆だったわけではない。資産が大きくなれば、機動的に中小型株を売買するのは難しくなる。ファンドが大きくなるほど、かつての身軽さは失われていく——成功ゆえの悩みだ。それでも藤野は、成長投資の軸をぶらさなかった。会社に会い、人を見て、長く持つ。その原点は変わらない。

では、これほどまでに「投資の力」を信じる藤野は、お金そのものをどう考えていたのか。儲けることが目的なら、もっと別のやり方もあったはずだ。彼があえて「お金よりも大切なもの」を語るとき、そこには何があるのか。最終章で、その投資観の中心に触れていこう。

第 4 章 · お金よりも、大切なもの

前の章では、藤野が「ひふみ」を通じて、普通の人に長期・積立の成長投資を届けたことを見た。これほど投資の力を信じる人が、なぜわざわざ『投資家がお金よりも大切にしていること』という本を書いたのか。この最終章で、彼の投資観の中心に触れていく。

この本で藤野が最初に挑むのは、日本人が抱く投資への「うしろめたさ」だ。汗水たらして働いて得るお金は尊いが、株で増やしたお金はどこか後ろ暗い——そんな感覚が、この国には根強くある。お金の話をすること自体が、はしたない、品がない、と思われがちだ。藤野は、この空気を真正面から問い直す。お金は、汚いものでも、怖いものでもない。むしろお金は、人の意志を運ぶ道具だ、と。

彼の有名な考え方に、「投資とは、応援だ」というものがある。あなたがある会社の株を買う。それは、その会社の事業を、未来を、「いいね、頑張れ」と応援することだ。あなたのお金は、その会社が新しい商品をつくり、人を雇い、社会に何かを生み出すために使われる。だから投資は、自分のお金を「どんな未来に流すか」を選ぶ行為なのだ。いい会社にお金が集まれば、いい未来がつくられる。悪い会社からお金が引けば、その事業はしぼむ。私たちは投資を通じて、どんな社会をつくりたいかに、一票を投じている。

ここから、藤野の有名な一節が出てくる。彼は「お金は、自分を映す鏡だ」と言う。どんなものにお金を使い、何に投資するか——その選択には、その人の価値観がまるごと表れる。安さだけを追うのか、それとも、いい仕事をしている会社を応援するのか。お金の使い方は、生き方そのものなのだ。だから彼にとって、投資の勉強とは、銘柄選びの技術である以上に、自分は何を大切にしたいのか、という問いと向き合うことだった。

藤野は、ケチと倹約をはっきり分ける。倹約は、大切なことのために無駄を省くこと。だがケチは、お金を出すべきところでも出し惜しみ、ただ貯め込むことだ。お金を、ただ通帳の数字として眠らせておく——それは一見、安全に見えて、実は何も生まない。お金は、世の中を巡ってこそ働く。人を応援し、事業を育て、未来をつくる。流れを止めて貯め込むだけでは、お金の本当の力は発揮されない。彼が「明るい投資観」を語るのは、お金を社会に巡らせることが、めぐりめぐって自分にも、社会全般にも返ってくると信じているからだ。

ここで、第1章からの流れを振り返ってみよう。彼が下げ相場の日本で「成長」を信じたこと。経営者に会い、人を見て、会社の未来に賭けたこと。ひふみを通じて、普通の人に長期・積立を届けたこと。これらはすべて、一本の線でつながっている。藤野にとって投資とは、ただお金を増やす技術ではなく、「いい会社を見つけて、応援し、いっしょに未来をつくる」営みなのだ。経営者に会いに行くのも、その人を信じられるかを確かめるため。長期で持つのも、応援は一日では終わらないから。すべては、この投資観から流れ出ている。

もちろん、これは「お金はどうでもいい」という話ではない。むしろ逆だ。藤野は、お金を真剣に増やそうとする。だが、お金を増やすこと自体を目的にはしない。お金は、自分が信じる未来を実現するための手段だ。だから、「お金よりも大切なもの」——何を応援したいか、どんな社会に生きたいか、どう生きたいか——を見失わない限り、お金はちゃんと味方になる。順番を間違えなければいい。お金が先で人生が後ではなく、人生が先で、お金は後だ。

投資初心者にとって、この視点はとても心強い。「儲けなきゃ」「損したくない」という不安から始めると、相場の上下に振り回され、すぐに疲れてしまう。だが「いい会社を応援する」という視点から始めれば、株価が一時的に下がっても、自分が応援したい会社であることは変わらない。だから、落ち着いて持ち続けられる。投資を「怖いギャンブル」から「未来づくりへの参加」へと置き換えること——それこそ、藤野が日本に届けたかったものだ。

この unit を通じて見てきたのは、一人の運用者の成功談ではない。お金との向き合い方を、明るく問い直す一つの生き方だ。株が怖いと言われる国で、彼は「投資は明るい」と言い続けた。そして自分の足で経営者に会い、普通の人に長期・積立を届け、お金よりも大切なものを語った。私たちが今日からできることは、難しくない。月に少しでいい、自分が「いいね」と思える会社に、未来に向けてお金を流してみる。その一歩が、雪だるまの最初のひと転がりになる。投資とは、結局、自分がどんな未来を信じるかを、お金で表すことなのだから。

投資とは、お金で世の中に「いいね」を押すこと——どんな未来を応援するかは、あなたが選べる。—— 金言

について巨匠堂

巨匠堂

藤野英人(ふじの・ひでと)は1966年生まれまれ、富山県出身の運用者・投資家。野村投資顧問、ジャーディン・フレミング、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントなどで日本株運用を担い、2003年にレオス・キャピタルワークスを設立。2008年に直販の「ひふみ投信」を立ち上げ、後に「ひふみプラス」を通じて広く普及した。著書『投資家がお金よりも大切にしていること』は、投資をお金儲けの技術ではなく社会への参加としてとらえ直し、多くの読者に届いた。

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