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かつてのウォール街の英雄が「製薬業界のバークシャー」に賭けた。だが株価がピークから90%下落して、ようやく静かに退場した。
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第 1 章 · ポールソンのバリアント株集中投資——成長ストーリーを追いかけ、会計不正の泥沼にはまる
かつてのウォール街の英雄が「製薬業界のバークシャー」に賭けた。だが株価がピークから90%下落して、ようやく静かに退場した。
2015年8月、バリアント・ファーマシューティカルズの株価は260ドルで止まっていた。ジョン・ポールソンはオフィスに座り、含み益は10億ドルを超えていた。彼は2008年にサブプライムを空売りして150億ドルを稼ぎ、ウォール街で神格化された男だ。そしていま彼が賭けたこの会社は、アナリストたちから「製薬業界のバークシャー・ハサウェイ」と呼ばれていた。すべてが完璧に見えた。
二年後、その10億ドルは、一銭も残らなかった。
バリアントの物語は、そのビジネスロジックから語り始めなければならない。本社をカナダに置くこの製薬会社は、伝統的な製薬企業とはまったく違う道を歩んでいた。研究開発に金を燃やさない。新薬パイプラインに賭けない。その代わり、流れ作業のように既存の医薬品を買収しては、価格を大幅に引き上げる。2015年には、ある心臓病治療薬の価格を、一夜にして525%も跳ね上げた。これは例外ではなく、システムとして組まれた戦略だった。財務レバレッジで企業を買収し、価格決定力で利益を絞り取り、見栄えのいいEPSの数字でウォール街の食欲を満たす。
ポールソンが見ていたものは何か。彼が見ていたのは「成長ストーリー」だった。バリアントの株価は2010年の20ドルから一気に260ドルまで駆け上がり、五年で13倍になった。経営陣は四半期ごとに市場予想を上回る決算を出し、アナリストの目標株価は上がり続けた。このストーリーの中で、バリアントは一台の永久機関だった。資産を買い、値上げし、キャッシュフローを生み、そのキャッシュでさらに資産を買う。
このロジックには、一つの致命的な前提があった。数字が本物でなければならない、ということだ。
2015年10月、空売り専門のシトロン・リサーチが一本のレポートを公表した。その核心にある告発は、たった一つ。バリアントはフィリドールという名の関連薬局を通じて、売上を水増ししていた——というものだ。フィリドールは独立した第三者の販売チャネルではなく、バリアントが実質的に支配する影の実体だった。医薬品をフィリドールに「売れば」、それは売上に計上される。だがその薬が本当に末端の患者の手に渡ったのかどうかは、誰にもはっきり説明できなかった。
レポートが出た当日、バリアントの株価は一日で19%暴落した。
市場の反応は、理性的なディスカウントではなく、パニックによる将棋倒しだった。バリアントの株主名簿には、当時もっとも頭のいい機関投資家たちが名を連ねていた。パーシング・スクエアのビル・アックマン、セコイア・ファンド、そしてポールソン。彼らは同時に大量の持ち株を抱え、そして同時に、自分たちが同じ罠を踏んだかもしれないと気づいた。誰もが我先に逃げ出そうとしたとき、出口の幅はそれほど広くない。
ポールソンは持ち株を減らし始めた。だが売ること自体が株価を押し下げ、株価が下がるとさらに多くの投資家が逃げ出し、逃げ出すことがまた株価を押し下げる。これは自己増殖する死のスパイラルだった。
バリアントはその後、会計上の問題を認めた。規制当局が調査に乗り出した。会社の負債は300億ドルにのぼり、売上偽装の影が、借り換えをほぼ不可能にした。かつて「永久機関」のストーリーを支えていた一つひとつのレンガが、一枚ずつ緩み、崩れ落ちていった。
2016年初めには、株価はすでに100ドルを割った。2016年半ばには、30ドルを割った。260ドルから26ドルへ。下落率は90%を超えた。
ポールソンの保有ポジションの時価は、ピーク時の10億ドル超から、最終的に売り切ったとき、損失はやはり10億ドルを超えたと推計される。これは小さな数字ではない。彼が率いるファンドの運用規模の、相当な部分に匹敵する額だ。2008年、彼は他人に見えないリスクを見抜くことで名声を手にした。だがバリアントでは、自分が抱きしめたリスクを見なかったことで、同じ桁の代償を払った。
後から振り返れば、バリアントの問題は、まったく察知できないものではなかった。そのビジネスモデルは三本の柱に支えられていた。買収対象が絶えず供給され続けること。医薬品の価格決定力が脅かされないこと。そして財務数値の信頼性。どれか一本が折れれば構造全体が崩れ落ちる。
買収頼みのモデルは、会社の「成長」が内発的なものではなく、外部の資産を次々と買い込んで積み上げたものにすぎないことを意味する。いったん買収が鈍るか、資金調達コストが上がれば、成長は突然消えてなくなる。価格決定力は市場と世論の許容度に依存していたが、2015年前後、薬価の高騰はアメリカ社会の公共的な論点になりつつあり、この柱はもともと危うかった。そして財務数値の信頼性——フィリドールの存在を示す兆候は、ずっと前から漂っていた。ただ、誰も真剣に問い詰めようとしなかっただけだ。
これこそ「成長ストーリー」のもっとも危険なところだ。物語が十分に魅力的になると、賢い人間ほど、それを疑うのではなく、弁護し始める。ポールソンはこの間違いを犯した最初の人間ではないし、最後の人間でもないだろう。
集中投資は、上昇局面では驚くべきリターンを生む。だがそれは同時に、判断を誤ったとき、同じ驚くべき速さですべてを失うことを意味する。ポールソンは2008年、集中して賭けることですべてを勝ち取った。そしてバリアントでは、まったく同じやり方で、それを失った。道具そのものは中立だ。だが道具を使う人間は、たいてい、それが前回もたらした栄光だけを覚えている。
260ドルという高値は、いまではただの歴史上の座標にすぎない。バリアントはその後、社名を変え、経営陣を入れ替え、規模を縮めた。かつてその「バークシャー・ストーリー」に拍手を送ったアナリストたちは、とうに次の物語へと乗り換えていた。
そしてポールソンは、あの10億ドルの授業料を抱えたまま、いまも自分のファンドを運用し続けている。
買収主導の成長は、「収益の質」を分解して見る必要がある。内生的な成長と、外部買収による貢献とを切り分けるのだ。もし買収分を取り除いたあとのオーガニックな成長がほぼゼロなら、いわゆる「成長株」としての評価プレミアムは、足場を失う。—— 投資からの示唆
本篇 1 の書き留めたい一節
- 買収主導の成長は、「収益の質」を分解して見る必要がある。内生的な成長と、外部買収による貢献とを切り分けるのだ。もし買収分を取り除いたあとのオーガニックな成長がほぼゼロなら、いわゆる「成長株」としての評価プレミアムは、足場を失う。—— 投資からの示唆



